No.36 アパートの空室対策とリフォーム案

「それは設備が陳腐化してきた古いアパートより、キレイで新しい部屋の方がいいよ。多少家賃が高くなっても」、息子がさも当然という風情で言う。そこで言葉を止めたのは、そうは言っても設備の更新には費用がかかること、そのために借入をしてまでリフォームをしても返済仕切れるのかという不安があることなどが頭を過ぎったためだろう。

父が生きている時に建てた6部屋のアパートは、数度のリフォームを経て頑張っていた。借入金は全額返済していたが、ここ数年は空室が出るようになっていたのだ。場所は南海難波駅まで徒歩15分位、小さなスーパーや公園もあって悪くない。場所にもよるのだろうが、大阪はメイン道路を一歩入るとごちゃごちゃとした古い建物が立ち並ぶ不思議な町なのだ。

入退居の管理を依頼している不動産会社からも、空室対策としていくつかの提案がきている。設備を順次リフォームしていく、空室が出たら民泊としての利用も検討してみる、設備を更新しない代わりに家賃を安くするなどなど。常識的に考えれば設備を新しくしていくところなのだが、賃貸住宅の空室率、特にある程度の築年数を経たアパートやマンションの空室率が高止まりしているのは動かしがたい事実だったのだ。

素人ながら、私も考えてみたことがある。1階はバリアフリーにして高齢者専用の部屋にしようか。2階は子育て中の夫婦や片親家庭に使ってもらおうか。いずれにしても家賃の値下げはあっても、値上げはあり得ない。駅近やオンリーワンな物件ならともかく、設備を更新しても競合があるから値上げは厳しいだろう。残るのは設備を更新して値下げ、設備をこのままで値下げかのどちらかだった。

それならば多少手をいれるところへ手を入れて、安くても長く使ってもらえる方が良いのではないか?夫が病死してから1人で息子を育ててきた自分にとって、このアパートは命綱となってくれた。母子家庭や父子家庭世帯、老人の1人世帯などはいくら補助があるとは言っても働き方が制限されるし、経済的に楽ではないのだ。保育園の真似事は出来ないが、留守にする間、子供たちを預かる位のことは子育ての経験者として十分に出来る。アパート隣のこの自宅で、一緒に料理をしながら食事をしたって構わない、むしろ楽しいだろう。

空室対策ばかりに目が行きがちだが、自分にとってはここから先の人生は「世の中にお返しする」ものであっても良いはずだ。当面は息子が内心では心惹かれているらしい民泊を試してみても良いだろう。でも私が本当にやりたいのは…本気で検討すべき時がきたのかもしれなかった。

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